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公開日:2024-10-24

少なく食べると長生きできる本当の理由

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米国ジャクソン研究所の研究チームは、加齢と寿命に関する大規模な動物実験を行い、食事がどのようにして人々を長寿に導くのか、その詳細を明らかにした。

ほぼ1世紀にわたって研究者は、ダイエットや断食によって食べる量を減らした動物が長生きし、健康寿命も延びることを観察してきた。だが、また同時に、研究者はその理由の説明と、その結果をいかにヒトへと応用すべきなのかについても悩んできた。

今回、ジャクソン研究所の研究チームは、『ネイチャー』誌に発表した研究において、遺伝的にきわめて多様な約1,000匹のマウスを用いた動物実験を行い、これまでの疑問に対するひとつの結論を得た、と報告した。

この研究で最も重要なことは、実験に用いられたマウスの遺伝的多様性である。実験用のマウスには様々な遺伝的系統があるが、通常1回の実験に用いられるのは1系統のマウスのみである。それは均一な再現性のある結果を得るためであるが、ヒトの集団は誰もが知るように遺伝的には極めて雑多な集団である。今回用いられた1,000匹のマウスは、そのヒトの遺伝的多様性に匹敵する多様性を備えていたことから、よりヒトの場合に近い結果を得られることが期待された。

今回の実験では、毎日の食事の摂取カロリーを減らすダイエットのほうが、定期的(週1日または2日)な断食よりも、寿命を延ばす効果の高いことが明らかになった。超低カロリーの食事は、体重や血糖値に関係なく寿命を延ばす効果があるようだった。しかも、意外なことに、少なく食べても体重がほとんど減らなかった場合に、最大の長寿効果が現れたのだった。体重が大きく減少したマウスは、活力が失われ、免疫系や生殖系の機能が低下し、短命になる傾向にあった。

「私たちの実験が示唆する最も重要なポイントは回復力ということです」と主任研究者のギャリー・チャーチル教授は述べている。「カロリー制限というストレスに直面しても体重を維持することができた、最もたくましいマウスが、最も長生きだったのです。もっともそれは、もう少しおだやかなカロリー制限こそが、長期にわたる健康維持と長寿のバランスをとる方法である可能性も示唆しています。」

チャーチル教授らの研究チームは、雌の遺伝的に極めて多様なマウス約1,000匹に異なる5種類の食事のいずれかを与えた。すなわち、1)いつでも好きなだけ自由に食べられる食事、2)基準カロリーの80%に制限した食事、3)基準カロリーの60%に制限した食事、4)週1日を断食し他の日は好きなだけ食べられる食事、および5)週の連続しない2日を断食し他の日は好きなだけ食べられる食事、である。マウスは生涯にわたって定期的に血液検査を受け、健康状態全般を徹底的に評価され続けた。

実験の結果、全体的には、間欠的な断食よりも、継続的なカロリー制限のほうが長寿になることが明らかになった。1)の制限のない食事をしたマウスの平均寿命は25か月、4)5)の間欠的な断食をしたマウスの平均寿命は28か月、2)の80%カロリー制限したマウスの平均寿命は30か月、3)の60%カロリー制限したマウスの平均寿命は34か月だった。

けれども、実際のところ平均寿命とはうらはらに、グループ内の各マウスの寿命には大きなバラツキがみられた。たとえば3)の最も摂取カロリーの少なかったマウスの実際の寿命の範囲は数か月から4年半にまで及んだ。

その理由を探るべく、すべてのデータを解析した結果、マウスの遺伝的な要因が食事以上に大きな影響を寿命に及ぼしていることを研究者らは発見した。食事が寿命を延ばす仕組みのどこかに、未知の遺伝的な要素が介在しているということである。

遺伝子にコード化された回復力が寿命を決める重要な要因であることも明らかになった。カロリー制限にもかかわらず体重、体脂肪率、免疫力を維持できるだけの回復力が遺伝的に備わったマウスが最も長生きだった。

「もし長生きしたいのであれば、食事のように自分でコントロール可能な要素もありますが、本当のところは、長生きのおばあちゃんを持っているかどうかなのです」とチャーチル教授は述べている。

本研究はまた、カロリー制限が寿命を延長する理由についての従来の仮説に疑問を呈するものでもある。たとえば、体重や体脂肪、血糖値、体温などはカロリー制限と長寿の関係を説明しない。むしろ、重要なのは免疫機能と赤血球の機能であることがこの研究では明らかになったという。とりわけ重要なことは、従来のヒトでの長寿研究では、今挙げたような指標が健康寿命の延伸や若さの指標として用いられていることである。従来の長寿研究は、もしかしたら健康的な加齢のより重大な側面を見落としている可能性があるのである。

「カロリー制限は、一般的に長生きのために良いことです。でも私たちのデータでは、カロリー制限で体重が減ることは長寿にとって良いこととは言えません」とチャーチル教授は述べている。「ですから、長寿薬の臨床試験で、患者の体重が減少し代謝プロファイルが改善されるのをみても、それが実際には長生きのための良い指標ではない可能性があるということです。」

出典は『Nature

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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