公開日:2022-06-21
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ADHD(注意欠陥・多動症)の子供にとって、果物と野菜の豊富な食事が症状を減らす助けになりそうだ、という米国オハイオ州立大学の研究結果が発表された。
研究チームは、90日以上をかけて、ADHDの子供134名の両親に、子供たちが普段食べるものについて詳細な聞き取り調査を実施した。さらに、両親に対して、子供たちにADHDの特徴的な症状(集中力を維持できない、指示に従わない、物事を記憶できない、感情をコントロールできない、など)が起きる頻度をたずねた。
得られたデータを解析した結果、より多くの果物と野菜を食べている子供たちは、重度の症状が比較的少ないことがわかった、と共同研究者のイレーヌ・ハツ准教授は語っている。
「果物や野菜を豊富に含む健康的な食生活は、ADHDの症状を減らすことができるひとつの方法です」とハツ准教授は言う。 この研究結果は、最近『栄養神経科学』誌オンライン版に掲載された。 |
本研究のデータは、MADDY(小児ADHDのための微量栄養素)研究の一環として集められたものである。このMADDY研究は、6-12歳のADHD児134名を対象に、ビタミンやミネラルなど36種類の栄養成分を含むサプリメントの有効性について、プラセボ(偽薬)を対照として検証したものだ。
サプリメントの有効性については、ADHDの症状や感情調節不全などが、サプリメント群で、プラセボ群に比べて、3倍改善したことから、極めて有望であることが明らかになった。こちらの研究結果については、昨年『米国児童青年精神医学会誌』に発表されている。
また、同じ子供たちを対象とした別の研究結果が、今年初めに『栄養素』誌に発表されている。そこでは、食料不安の高い貧困家庭の子供たちは、それ以外の子供たちに比べて、より重度の感情調節不全の症状を起こすようだ、ということが示されている。
これら3つの研究結果は、同じものを別の角度から描いた絵のようなものだ、とハツ准教授は言う。健康的な食生活は、子供たちが必要なすべての栄養素を十分に供給して、ADHDの症状を減らす助けになるのである。
「医師は通常、子供たちのADHD症状が重症化した場合、既に投薬済みならその量を増やし、まだなら投薬を始めようとします」とハツ准教授は言う。
「私たちの研究結果が示唆しているのは、子供たちが充分な食料を得ているのか、食事の質は保たれているのかをまず調べ、それが症状の重症化に関連していないか考えることには意味があるだろう、ということです。」
MADDY研究に参加した子供たちは、オハイオ州コロンバス、オレゴン州ポートランド、カナダ・アルバータ州レスブリッジから2018年から2020年にかけて集められ、果物と野菜の摂取量や食料不安に関するデータは、サプリメントの摂取を始める前に調査された。
■ADHDではなぜ食事が重要なのか?
「研究チームは、ADHDが脳内の神経伝達物質の低下することに関連していると信じています。これらの重要な神経伝達物質を身体が作り出すときや脳が正常に機能するためにカギとなる補因子が、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素なのです」とハツ准教授は述べている。 ■食料不安も付加的な役割をはたしている 「ヒトは誰でも空腹になるとイライラがつのります。それはADHD児も例外ではありません。だから彼らが充分な食料を得られなければ、症状は悪化する可能性が高いのです」とハツ准教授は述べている。 |
また、子供たちに十分な食料を与えることができない両親もストレスを抱え、それは家族間の緊張を生み、それも子供のADHD症状を増やすことにつながる可能性がある。
MADDY研究は、アメリカとカナダでADHDの症状と食事の質について検討した初めての研究であるが、一般的な西洋型の食生活では果物と野菜が不足しがちである。
「私たちは医師が治療を開始するにあたっては、まずADHD児の食料不安を調査するべきだろうと考えます」とハツ准教授は述べている。
「家族の食料事情を改善し、より健康的な食事にすることは、症状改善の助けになるはずです。」
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