公開日:2020-09-29
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新型コロナの小児患者に関する、現在までで最も包括的な研究で、米国マサチューセッツ総合病院の研究チームは、小児がこれまで考えられていた以上に新型コロナの蔓延に広範な役割を果たしていることを示唆する詳細なデータを発表した。
研究ではマサチューセッツ総合病院を受診した、新型コロナ感染が疑われたり、小児多臓器炎症症候群(MIS-C)で入院中の小児(0-22歳)192名が含まれており、うち49名が新型コロナウイルス陽性、さらに18名がMIS-Cであった。感染した子供たちは、新型コロナ治療のためにICUに入院中の成人患者に比べて、有意に高い量のウイルスを気道に保持していたという。 |
「全年齢層の子供たちに極めて高いレベルのウイルスが発見されたことは驚きでした。特に感染2日以内の子供で高かったのです」と筆頭研究者のラエル・ヨンカー医師は語っている。「私は、ウイルス量がこんなに多いとは予想していませんでした。誰でも重篤な成人患者に対しては充分な注意を持って接するでしょうが、実際には彼らは、症状がなく普通に歩きまわっている陽性の子供たちに比べて、顕著に少ない量のウイルスしか持っていなかったのです。」
「子供たちの症状は、感染の経過と一致しません」と主任研究者のアレッシオ・ファサーノ医師は語っている。「今回のパンデミックにおいて、私たちは主として症状のある患者の検査をしていました。それで私たちは感染者のほとんどが成人だという間違った結論を出してしまったのです。今回の結果が示しているのは、子供が決してウイルスから保護されてはいないということです。子供たちを、このウイルスの潜在的な拡散者から除外するべきではありません。」
研究チームは、新型コロナ陽性の子供たちが大人たちほど重篤な症状になることはほとんどないものの、無症候性の保菌者あるいは軽症の保菌者として学校や家庭内で感染を広げる可能性があると述べている。特に、パンデミックにおいて経済的打撃の大きかった貧困層の家庭で、脆弱な高齢者への感染が懸念されるという。実際、新型コロナ陽性の子供たちの51%が貧困層であり、富裕層は2%に過ぎなかった。
子供には新型コロナウイルスの受容体が少ないために重篤化しにくい、という現行の仮説は正しくないという。確かに、より低年齢層の子供たちのウイルス受容体は少なかったが、それとウイルス量が少ないかどうかは関係がなかったのである。研究チームによれば、この知見は、子供たちが、新型コロナを発症し易いかどうかには関係なく、ウイルスを大量に保持し、そのために感染性も高い可能性があることを示唆している。 研究チームではまた、感染の数週間後に発症する可能性のあるMIS-Cに免疫不全が関与していることも明らかにした。小児患者のMIS-Cと感染後免疫応答を理解することは、治療と予防の戦略における次のステップを開発する上で極めて重要であるという。 |
研究チームは、社会的距離、マスクの着用、効果的な手洗い、リモート学習と対面学習の組み合わせなどの感染対策の必要性を強調している。
「本研究は、政策立案者らが、学校、デイケアセンター、その他の児童施設のためのベストの決定を可能にするために必要な多くの事実を供給するものです」とファサーノ医師は言う。「子供たちは新型コロナウイルスの潜在的な拡散源であり、そのことは学校再開のための計画でかならず考慮すべきです。」
ファサーノ医師は、充分な計画なしの性急な学校再開は、感染拡大を招くだけだとして、「もし必要な処置なしに学校を完全に再開すれば、子供たちがパンデミックで重要な役割を演じることになってしまうでしょう」と結論付けている。
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