公開日:2013-06-25
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大気汚染のひどい地域に住む妊婦の子供は、自閉症のリスクが2倍に高まる、という米国ハーバード大学の研究が、『環境健康展望』誌に発表された。
自閉症は、他人とのコミュニケーションや社会的行動に困難を生じる発達障害の一種である。遺伝的な素因によって生まれつき脳の機能に問題が起こるためといわれているが、はっきりした原因はわかっていない。
大気汚染物質には多数の毒性物質が含まれているが、なかでもディーゼル排気ガス、鉛、マンガン、水銀、塩化メチレンなどの大気汚染物質は子宮内の胎児にまで及び脳神経系の発達に影響を与えると考えられている。
研究チームは、以前の論文で、これら大気汚染物質の濃度が高い地域に住む妊婦の子供は自閉症(正確には自閉症スペクトラムというもう少し広範囲の病態)のリスクが高まることを示唆していたが、そのとき使われたデータは、米国内のわずか3地域のものに留まっていた。 |
そこで今回の報告では、1989年以来、全米で10万人以上の看護師を対象に実施されている大規模疫学研究「看護師健康研究II」のデータを使用して、米国全体における大気汚染と自閉症の関連性を明らかにしようとしたという。
研究チームは、看護師健康研究IIの参加者から、325名の自閉症児と22,101名の非自閉症児の出生地と誕生日時に関する情報を抽出し、米国環境保護局がまとめている米国内の各地域の大気汚染物質濃度の時系列データと照らし合わせて、子供が生まれたときの大気汚染濃度と自閉症リスクの関係を解析した。
その結果、ディーゼル排気ガス、鉛、マンガン、水銀、塩化メチレン、およびすべての金属の各々について、汚染レベルの最も高い地域で生まれた子供は、最も低い地域で生まれた子供に比べて、自閉症を発症するリスクが1.5-2.0倍も高まることがわかったという。特に高かったのはディーゼル排気ガスと水銀でリスクは2.0倍だった。最も低かったのは、すべての金属の総量による影響で、リスクは1.5倍だったという。
さらに、汚染の度合いが高まるにつれてリスクも徐々に高まっていく濃度依存的な関係にあることもあきらかになった。つまり、少しでも空気のきれいな場所に移り住むことが妊婦には好ましいということである。 もともと自閉症は男児に多いことが知られているが、ほとんどの汚染物質の影響も、女児に比べて男児に顕著な影響を与えることがわかったという。しかし、今回の調査では自閉症の女児の数が少な過ぎてはっきりしたことがいえなかったため、研究チームでは更なる検討が必要だとしている。 |
研究主任のマーク・ワイズコップフ准教授は、「今回の研究結果からいえるのは、今後自閉症に関する疫学調査を行う場合には、妊婦や新生児の血中にどれだけの大気汚染物質が含まれるかを測定すべきであるということです。そうすることによって、より明確に大気汚染と自閉症の関連を明らかにすることができるでしょう。またそれによって妊婦が大気汚染に曝されないような方策も見つかるかもしれません」と語っている。
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