公開日:2015-12-24
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子どもの朝食欠食は世界的な問題だが、学校の成績に及ぼす長期的な影響についての実証的な研究成果は意外に少なかった。今回、英国カーディフ大学の研究チームは、5千人の小学生を対象にした大規模研究で、朝食の質が学業成績に影響することを裏付ける強力な証拠が得られた、と『公衆衛生栄養』誌に発表した。
研究チームによれば、欠食をせず質の高い朝食を食べる生徒は、成績も良好であり、朝食を食べない子どもたちと比較して、平均以上の成績を取る確率が2倍高かった。ただし、健康的でないお菓子やポテトチップなどを朝食に食べても成績を高める効果はみられなかった。食事調査から成績評価までの時期が接近している方がより強い効果がみられたという。
筆頭研究者のハンナ・リトルコットは語っている。「朝食を食べることは、これまでも一貫して良好な健康状態、集中力や記憶力など短期的な尺度に関連付けられてきましたが、より長期の学業成績に及ぼす影響についてはハッキリしていませんでした。私たちの研究結果は、生徒たちが何を食べ、それが学校でどのように影響するかについて、これまででもっとも強いエビデンスをもたらすものであり、教育行政や公衆衛生行政に重大な意義をもつものです。英国では首相が無料の学校給食を廃止するという噂が流れていますが、とんでもないことです」 |
本研究は、英国ウェールズの100校以上の小学校に在学する5-6年生(9-11歳)約5千名を対象に2005-7年に実施された。朝食の摂取頻度とそのクオリティが調べられ、6-18か月後の学業成績と比較された。成績は日本の通知表に当たる標準的な方法が用いられた。標準的な学業成績への効果を調べたものとしては過去最大規模のものである。
調査では、子どもたちは、前日の朝食から当日の朝食までの24時間に何を食べ、何を飲んだかをすべて思い出してリストにした。質の良い健康的な朝食を食べることだけでなく、朝食以外のお菓子やポテト、野菜や果物の摂取などもすべて学業成績への明らかな影響がみられたという。
「子どもたちの健康維持にお金と時間を費やすことは、学校の主要業務である教育からの逸脱であるという見方があり、これは部分的には学力の向上を達成するという圧力のせいでもあります。けれども、このような見方をする人々は、健康と教育の間にある相乗効果を見落としているのです。健康改善を教育そのものに組み込むことで教育効果が高まるであろうことは明白です」とリトルコットは語っている。
本研究は、食行動と学校の成績との有意義な関係を明らかにしたこれまでで最も強力な証拠であるとして、社会科学者の間で高く評価されているようだ。
ユニバーシティコレッジロンドンのクリス・ボーネル教授(社会学)は本研究結果を歓迎して次のように語っている。「この研究は、学校において健康と教育が優先権争いをするのではなく、互いに補い合う形で回っていく必要があることを強調するものです。英国では現在多くの学校で無料の学校朝食が提供されていますが、最も必要な子どもたちが学力を向上させるための重要な仕組みとして保障されなければなりません。」 また、本研究の経緯について共著者のグラハム・ムーア博士は、次のように語っている。「ウェールズの大部分の小学校が現在では無料の学校朝食を実施しています。私たちの以前の研究では、これが子どもたちの朝食の質を高めるのに効果的であることを示していましたが、朝食欠食を減らすかどうかまではわかりませんでした。今回、私たちのデータを実際の学校の成績と突き合わせることで、朝食を食べることと成績向上に関連があるというしっかりしたエビデンスが得られました。これは、家庭で朝食を食べない子どもたちに学校朝食を奨める立派な理由になります。」 |
「ウェールズ公衆衛生局はこの重要な仕事を歓迎します。それは私たちが何を食べれば教育的な改善につながるかについての理解を深めてくれるものです。私たちは朝食が教育効果を改善することをもっとよく知る必要がありますが、この研究はまさにそれです」とウェールズ公衆衛生局のジュリー・ビショップ博士は賛辞を送っている。
朝食が学業成績を向上させるメカニズムについての更なる研究が必要であろう、と研究チームは結論付けている。
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