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公開日:2016-07-14

不飽和脂肪が長生きの秘訣!

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30年以上にわたる大規模疫学調査のデータを解析した結果、不飽和脂肪の豊富な食事が総死亡率を低下させることが明らかになった、と米国ハーバード大学THチャン公衆衛生大学の研究チームが発表した。本研究は、食事中の脂肪の摂取が健康に及ぼす影響について検討したこれまでの研究中、最も詳細かつ強力な検証を行ったもののひとつである。

p_117 脂肪は大きく分けて、飽和脂肪と不飽和脂肪、そして不飽和脂肪に水素を添加したトランス脂肪の3種類が存在する。飽和脂肪は、バター、ラードあるいは牛豚肉の脂肪に豊富に含まれる。トランス脂肪は工業的に作られたマーガリンなどに含まれる。不飽和脂肪は、オリーブ油、キャノーラ油、大豆油などの植物油および魚油などに豊富に含まれる。

今回研究チームは、飽和脂肪とトランス脂肪が多く含まれる食事が、等カロリーの炭水化物を含む食事と比較して、総死亡率を高めること、飽和脂肪を不飽和脂肪に置き換えることによって、死亡率が実質的に低下することを改めて明らかにした。等カロリーというのは、脂肪1gが9kcal、炭水化物1gが4kcalなので、例えば脂肪1gに代えて炭水化物2.25gを食べるという意味だ。

「医学界および一般大衆レベルにおいてもこの二十年このかた、食事中の脂肪の種類とその健康利益に関しては広範囲にわたる意見の不一致が存在していました」と筆頭研究者で博士候補生のドン・ワンは語っている。「本研究は、不飽和脂肪の重要な利益について、特にそれが飽和脂肪やトランス脂肪と置換された場合のそれについて記述しています。」

研究では、二つの長期大規模疫学研究(看護師健康研究と医療職追跡研究)から126,233名のデータが集められた。対象者は、32年にわたって2-4年毎に食事、ライフスタイル、健康状態に関する聞き取り調査に回答した。この間に33,304名の死亡が確認された。ハーバード大とブリガム婦人病院の研究チームは、食事中から摂取した脂肪の種類と総死亡率、心血管系疾患、がん、神経変性性疾患、呼吸器疾患による各々の死亡率の関係を分析した。

その結果、摂取した脂肪の種類が異なれば、それが死亡率に及ぼす影響もまた異なることを研究チームは発見した。トランス脂肪がヒトの健康に対してもっとも有害であることがわかったという。トランス脂肪の摂取が2%上昇するごとに早死のリスクは16%ずつ上昇した。飽和脂肪の摂取も同様に死亡リスクを上昇させた。等カロリーを炭水化物で摂った場合に比べて、5%割合が上昇するごとに総死亡リスクは8%ずつ上昇した。

それとは対照的に、不飽和脂肪の摂取は、多価不飽和脂肪酸も一価不飽和脂肪酸も、等カロリーの炭水化物を摂った場合に比べて、総死亡リスクを11-19%低下させた。植物油に多いオメガ-6系脂肪酸(リノール酸など)と魚介類に多いオメガ-3系脂肪酸(EPA、DHAなど)は、共に早死のリスクを低下させる効果がみられた。

ある種の脂肪の摂取を別の種類の脂肪に置き換えることによる健康効果も研究チームは発見した。たとえば、ある人が飽和脂肪に代えて不飽和脂肪、特に多価不飽和脂肪酸を多く摂るようになると、そのまま飽和脂肪をとり続けた場合に比較して、総死亡リスクが統計的に有意に低下した。同様に心血管系疾患、がん、神経変性性疾患、呼吸器疾患による死亡リスクも低下した。心血管系疾患の死亡リスクが低下することは、別の研究で報告されている、飽和脂肪とトランス脂肪を不飽和脂肪に代えるとコレステロール値が低下するという結果とも一致する。コレステロール値が低下すると心血管系疾患の死亡リスクは低下するからである。

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しかし、飽和脂肪を炭水化物で置き換えた場合には、死亡リスクの低下はわずかだった。また全脂肪を炭水化物で置き換えた場合には、死亡リスクはわずかに上昇した。研究チームでは、これは驚きではなく、米国人の摂る炭水化物のほとんどが精製穀物と砂糖に限られており、これらのリスクは飽和脂肪とほぼ同等であるためだという。

「私たちの研究結果が意味しているのは、できる限りトランス脂肪を避けることと、飽和脂肪を不飽和脂肪に置き換えることの重要性です。不飽和脂肪はオメガ-6系とオメガ-3系の多価不飽和脂肪酸を含みます。実用上は、動物性脂肪を種々の植物性脂肪に置き換えることで容易に実行可能でしょう」と主任研究者のフランク・フウ教授はコメントしている。

出典は『JAMA内科学』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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