公開日:2025-02-21
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スーパーで売っている普通のニンジン(Daucus carota)は、血糖値の調節能力を高め、腸内フローラ(細菌叢)を健康的にするので、2型糖尿病の患者にとっては潜在的なメリットがありそうだ、という南デンマーク大学の研究結果が発表された。
2型糖尿病では、インスリン分泌量の低下やインスリン抵抗性が起こり、治療には通常食事療法と投薬がかかせない。一般的な医薬品による副作用を経験する人も多数いる。ニンジンには、既存の治療法を補完する自然で副作用のない方法になり得る可能性がある、と研究者らはみている。
研究者らは、2型糖尿病のマウスに16週間以上にわたってニンジンを摂取させてその効果を検討した。マウスは、高脂肪で砂糖の多い不健康なヒトの食生活を模倣した高脂肪食で飼育されたのち、2群に分けられ、1群には食事の1割を凍結乾燥したニンジン粉にしたエサを与え、別の1群にはニンジン無しのエサを与えた。どちらのエサも同じカロリーになるように調節され、違いはニンジンを食べたか食べなかったかだけであった。 |
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実験の結果、ニンジン粉を与えられたマウスでは、経口ブドウ糖負荷試験で測定した血糖調節機能が改善されことが明らかになった。経口ブドウ糖負荷試験は、一定量の糖(ブドウ糖)を摂取させたときに、血糖値がどのように変化していくかを経時的に測定するものである。
「私たちの研究では、ニンジンの摂取によってマウスの腸内フローラの組成が変化することもわかりました。ニンジンを摂取したマウスでは、腸内細菌のバランスがより健康的なものに変化したのです」と研究者は述べている。
加えて、ニンジンを摂取したマウスでは、短鎖脂肪酸(SCFA)を産生する細菌が多くなった。SCFAは、細菌が食物繊維を消化して生成するもので、免疫系の活性化や免疫機能の改善など腸内の健康を改善するだけでなく、エネルギー代謝や血糖の調節を助ける働きがある。
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ニンジンには、細胞の糖を吸収する能力を促進し、血糖値の調節に役立つ生理活性物質が含まれている。これらの生理活性物質は、不飽和脂肪酸から作られ、パセリ、セロリ、パースニップなど、ニンジン科の他の野菜にも含まれている。
研究チームは、今回の結果をヒトに直接適用することには慎重であるという。 「私たちの研究は動物モデルを用いたものであり、次のステップとして臨床試験が実施されなければなりません」と研究者は説明する。「でも、臨床試験は費用もかかります。私たちは、生理活性物質を比較的多く含む品種のニンジンを用いて小規模な臨床試験を行うための外部資金を確保しようとしています。それがうまくいけば、精製された生理活性物質を使った動物実験を含むより大規模な臨床研究への道が開かれ、ニンジンの2型糖尿病予防効果が実証される可能性があります。」 |
大腸がんに対するニンジンの効果を調べた予備的な研究結果によると、生または軽く炒めたニンジンを30-40g食べることで有益な効果を得られることが示唆されている。
研究者らによれば、生理活性物質の含有量はニンジンの種類によって大きな違いがあるが、適切な品種を選べば、濃縮せずに生のニンジンから必要な量を摂取することができるという。たとえば、紫色のニンジンである「ナイトバード」種には、比較的高濃度の生理活性物質が含まれている。
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