公開日:2016-09-28
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カルシウムのサプリメントが、脳卒中などの脳血管疾患の兆候をもつ高齢女性において、認知症のリスクを高めることがあるようだ、というスウェーデン・ヨーテボリ大学の研究結果が発表された。
「高齢女性は、骨粗鬆症のリスクが高まることから、骨の成分であるカルシウム不足を補う必要があります。けれども、通常の食事からは、なかなか必要なカルシウムを補うことが難しいので、医療機関などでしばしばサプリメントの摂取が推奨されるのです」と主任研究者のシルケ・カーン博士は語っている。
脳卒中は、脳の微小血管が血栓で目詰まりするか、逆に切れて出血することで起こり、しばしば死に至る重篤な疾患だが、軽度であっても認知症のリスクを高めることが知られている。脳卒中は、かつては日本人の死亡原因のトップであり、現在でも常に上位に入っている。 |
今回カーン博士らの研究チームは、70-92歳の開始時に認知症ではなかった700名の女性を対象に5年間の追跡調査を行った。研究の開始時と終了時に記憶力など認知機能試験を受けるとともに、そのうち447名については、CTスキャンで脳の状態を検査された。
対象者の女性はまた、カルシウムサプリメントの使用状況と、認知症の診断状況についても追跡期間を通じてモニターされた。開始時に98名の女性がカルシウムサプリメントを摂取していた。開始時にすでに54名の女性が脳卒中を一度経験済みだった。追跡間中に54名が新たに脳卒中を発症した。59名は認知症と診断された。また、CTスキャンを受けた女性のうち71%には、脳血管疾患の兆候である白質病変がみられていた。
データ解析の結果、カルシウムサプリメントを摂取していた高齢女性は、摂取していなかった女性に比べて、認知症を発症するリスクが2倍に高まることが明らかになった。しかし、さらに詳細に解析したところ、リスクが高まったのは、既に脳血管疾患をもっていた女性に限られることがわかったという。もっとも、限られるといっても過半数の女性がその対象に含まれるので、重要な問題であることにかわりない。
脳卒中の既往を持つ女性では、カルシウムを摂取すると、摂取しない場合に比べて、リスクは約7倍も高まったという。白質病変がみられた女性でも、カルシウムの摂取で、そうでない場合に比べて、リスクは約3倍に高まった。脳卒中の既往も、白質病変も見られなかった女性では、カルシウムサプリメントは認知症のリスクを高めることはなかったという。 具体的には、サプリメント摂取群98名中14名(14%)、非摂取群602名中45名(8%)が認知症を発症した。脳卒中の既往のある女性では、摂取群15名中6名、非摂取群98名中12名が、そして脳卒中の既往のない女性では、摂取群83名中18名、非摂取群509名中33名が認知症を発症した。 |
「重要なことは、私たちの研究が観察的なものであるということです。つまりこの研究結果は、カルシウムサプリメントが認知症の原因であるというような因果関係を導くものではありません」とカーン博士は語っている。博士らはまた、本研究が小規模なものであって、すべての人に当てはまるわけではないこと、確認のために更なる研究が必要であると述べている。
食事に含まれるカルシウムは、通常サプリメントからのカルシウムとは異なる形で身体に作用するので、認知症を促進することはなく、むしろ保護的に働くだろうと、カーン博士はコメントしている。
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