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公開日:2017-01-24

野菜のカロテノイドは高齢者のクリスタルな知能を高める

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緑の葉物野菜に多く含まれる色素ルテインの摂取が多い高齢者は、長い経験によって蓄積された、いわゆる「結晶性知能」をより良い状態で保っているようだ、と米国イリノイ大学の研究者らが報告している。

p_127 ルテインは、カロテノイド色素の一種で、葉物野菜、アブラナ科の野菜、卵黄などに豊富に含まれる、と筆頭研究者で大学院生のマルタ・ザムロジービクスは語っている。ルテインは脳の細胞膜に蓄積して、神経保護的な役割を演じるのだという。

「先行研究において、個人のルテイン保持量が生涯にわたる知性と関連していることが報告されていました」とザムロジービクスは語る。「研究ではまた、ルテインの脳の灰白質への蓄積が、加齢に伴う認知機能の低下を抑えるともいわれていました。」

研究チームは、65-75歳の健康な参加者122名を対象に、「結晶性知能」を測る標準的な評価試験を実施した。同時、採血して血中のルテイン濃度を測定するとともに、脳の各部の体積をMRIで評価した。特に結晶性知能の維持に重要であることが示唆されている側頭皮質に焦点をあてた。

「結晶性知能」とは、レイモンド・キャッテルによって提唱された概念で、言語能力やこれまで学校や仕事で覚えてきた知識を扱う能力をさす。新しいことを学習したり問題を解決したりする能力である「流動性知能」と対比される。

解析の結果、血清ルテイン濃度の高かった者は、結晶性知能の検査成績が高い傾向がみられた。血清ルテイン濃度は、直近の食事しか反映していないが、より長期の食生活の反映である脳内のルテイン濃度とよく相関していたとザムロジービクスは述べている。血清ルテイン濃度の高かった者はまた、海馬傍回の灰白質が厚い傾向がみられたという。

「我々の分析から、右脳の海馬傍回の灰白質の体積は、ルテインと結晶性知能をつなぐ脳の部位であることが示唆されました」と主任研究者のアーロン・バーベイ教授は説明する。「これは、結晶性知能を維持する役割を特異的に担いと思われる脳内領域についての、そしてそれが食事のような因子によってどのように変化するかについての初めての手掛かりを与えるものです。」

「私たちの発見は、因果関係を証明するものではありません」とザムロジービクスは言う。「私たちは、ルテインが海馬傍回を通じて結晶性知能に関連していることを発見したのです。」

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「食事中のルテインが脳の構造に影響することの背後に、抗炎症性の作用、あるいは細胞間の情報伝達が存在するだろう、というのは推測の域をでません」とバーベイ教授は語っている。「でも我々の知見は、特定の栄養素が脳の加齢に影響を及ぼして、認知機能低下を遅くすることを示唆しているのです。」

出典は『加齢神経科学の最前線』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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