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公開日:2014-11-20

適度な飲酒が心臓に良いといえるのは一部の人だけ?

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缶ビール1本程度の適度な飲酒が、心臓の冠動脈疾患のリスクを下げるという報告は数多くあるが、それはある種の遺伝子変異を持っている人に限られるようだ、というスウェーデン・ヨーテボリ大学の研究結果が『アルコール』誌に発表された。

1416446360 ■飲酒の心血管病予防効果
研究チームは、心筋梗塞の患者618名と健康な人2,921名を対象に、日々の飲酒習慣とある遺伝子の突然変異が、心筋梗塞の発症にどのように関与しているかを調査した。その遺伝子(CETP TaqlB)はコレステリルエステル転移たんぱく質を作るものであり、飲酒の健康効果に関与することがすでに報告されていた。参加者は、飲酒量に応じて(1)飲まない、(2)低、(3)中、(4)高の4段階に群分けされた。心筋梗塞のリスクと飲酒量の関係について統計的に解析したところ、適度の飲酒者(3)は、低い飲酒者(2)に比べて、心筋梗塞のリスクが、35%低下することが明らかになった。

さらに、くだんの遺伝子変異(CETP TaqlB B2)を持つ人で同様にリスクを計算したところ、なんと心筋梗塞のリスクは80%も低下することがわかった。この効果は特に男性で強かったが女性にも同じように認められた。

この効果は、飲酒以外の生活習慣や社会経済状態、血清HDL-コレステロール値などの影響を除外してもみられたという。

この特殊な遺伝子変異は、全人口の15%にしか存在しない。「別の言い方をすると、適度の飲酒が予防効果を示すのは、全体の15%の人たちに過ぎないのです」とヨーテボリ大学のダグ・テーレ教授は語っている。

■大雑把に過ぎるアドバイス
今回明らかになった結果を考慮すると、世界中で用いられている適度な飲酒についてのアドバイスは、一般化するには程遠い、と研究チームは指摘する。「適度な飲酒だけでは十分な予防効果は得られません」と共同研究者のローレン・リスナー教授は語っている。「また、この遺伝子型を持っているというだけでも効果はないのです。両方が組み合わさった時にはじめて冠動脈疾患のリスクは顕著に低下するのです。」■仕組みは依然として不明
この遺伝子変異型は、CETP(コレステリルエステル転移たんぱく質)と呼ばれるたんぱく質に関するものであり、このたんぱく質はHDL-コレステロール、つまり心臓保護効果をもつといわれている善玉コレステロールに影響を与えることがわかっている。そこで、ひとつの仮説として、アルコールが変異のあるCETPに作用することでHDL-コレステロールの効果が高まることが考えられるという。もう一つの仮説としては、アルコール飲料に含まれる健康によい抗酸化物質が作用しているというものである。
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研究チームでは、二つの仮説のうちどちらかが正しいだろうと信じているというが、残念なことにどちらの仮説も、それが具体的にどのような仕組みであるかは全く不明のままだ。

「我々の研究結果が正しい方向へと導く手掛かりになるはずです」とテーレ教授は語っている。「けれども、そのためにはもっともっと多くの研究が必要です。どのように働くかが明らかになれば、幸運な15%にだれが含まれるのかを遺伝子検査で見つけるのは簡単なことですから、飲酒に関するアドバイスをもっと有効に活用できるようになるでしょう。しかし、最も重要なのは、冠動脈疾患を予防するための新たな身体の仕組みを明らかにすることです。」

出典は『アルコール』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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