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公開日:2015-09-14

人類全体の長寿化が進んでいるが、健康寿命は短縮傾向

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人類は25年前と比べて、6歳以上も平均寿命が延びているが、同時に、様々な疾病や障害によって健康が損なわれた状態で生きる日々も延びているようだ。ちなみに2013年に世界で最も平均余命が長かった国は言うまでもなく日本の73.4歳であり、最も短かったのはレソトの42歳だった。

世界中で寿命は延び続けており、最も貧しい国々でも人々は昔より長生きするようになっている。けれども、AIDS、マラリアなどの感染症や、がん、虚血性心疾患、脳卒中などの非感染性疾患(生活習慣病)といった様々な疾病と交通事故、災害などによる障害が複雑に絡まりあって、かなりの健康損失が生み出されている。

今回GBD(グローバル疾病負荷研究)2013の研究チームは、世界188か国の統計データを用いて算出した、2013年における人類の平均寿命及び疾病と障害による健康損失に関する報告を英国の医学誌『ランセット』に発表した。

HIV/AIDSやマラリアといった感染症対策をはじめとして、過去20年にわたる母子保健対策、肥満や栄養不良などの栄養対策などが精力的に推し進められた結果、世界中で人々の健康は顕著に改善され、人類全体の平均寿命は6.2歳延びた(1990年の65.3歳から2013年の71.5歳)。同時に健康寿命も5.4歳延びた(1990年の56.9歳から2013年の62.3歳)。

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健康寿命は、死亡に先立って、何らかの致命的でない障害によって健康ではなくなる年齢の平均値である。平均寿命よりも健康寿命の延びが短いということは、それだけ健康でない日々が延長されるということである。理想的には、健康寿命は平均寿命に等しくなることが望まれる。

「人類全体が健康面で大きく進歩しています。しかし現在もなお、主要な病気や障害に対して、それをいかに効果的に予防し治療するか、その方法を発見していくことが課題として残っています」と研究リーダーのテオ・ヴォス教授は話している。

illust_100 多くの国で健康寿命が大きく延びているものの、そうでない国もまた少なくない。ボツワナ、ベリーズの2013年の健康寿命は1990年とほとんど変わっておらず、各々2歳と1.3歳短くなっている。南アフリカ、パラグアイ、ベラルーシではさらに低下しており、レソトやスワジランドに至っては、なんと10歳以上短くなっている。それに対して、ニカラグアとカンボジアの2013年の健康寿命は、各々14.7歳と13.9歳も延びている。平均的な延び率の2倍以上である。

GBD2013ではまた、様々な疾病や障害によって発生する健康損失にも大きな変化がみられることを報告している。健康損失の大きさは、障害調整生命年(DALYs)と呼ばれる数値で示される。これは疾病、障害、早死によって失われた歳月を総合的に表したもので、1DALYは、健康寿命を1年短縮することに相当する。1990年から2013年にかけて、DALYsは3.6%低下した。

2013年の人類全体における健康損失の主要な原因は、上から順に、1)虚血性心疾患、2)下気道感染症、3)脳卒中、4)腰痛と頸部痛、5)交通事故であった。男女別にみると、女性は交通事故が上位10位以内に入っておらず、代わりにうつ病が入るなどの違いがみられた。

90年代以降、人類の健康損失を飛躍的に高めた最大の要因はHIV/AIDSだったが、近年の予防・治療法の進歩によって2013年には9位まで下落した。虚血性心疾患、脳卒中、腰痛、頸部痛、交通事故、COPDなども1990年以降に健康損失を顕著に高めた原因である。他の要因として10位以内に挙がっている下痢性疾患、未熟児・低出生体重児合併症、下気道感染症などは、近年有意に低下している。

当然のことながら、健康損失の原因は国によって大きなバラツキがみられる。DALYsが最も高いのは、サブサハラアフリカ(サハラ砂漠より南の国々)などの世界で最も貧しい国々である。逆にDALYsが最も低いのはイタリア、スペイン、ノルウェイ、スイス、イスラエルなどである。国別のDALYsに大きな影響を与えている因子は、虚血性心疾患などの非感染性疾患であり、1990年以降増加を続けている。

平均年収、年齢構成、出生率、教育制度などの社会人口統計学的な要因も健康損失に重要な関わりをもっており、これらの要因だけで国ごとのDALYsの違いの半分以上が説明可能になるという。

「種々の社会経済的因子が健康に大きな影響を及ぼすことは明らかだが、正確にわかっていることはまだまだ少ない」と健康測定評価研究所所長のクリストファー・マーレイ博士は語っている。「各国の健康寿命と健康損失を細かく調べることで、人類がより長く健康に生きるためのより良い指針作りに役立つだろう。」

出典は『ランセット』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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