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2013-05-29

プラスチックの可塑剤が子供の血圧を高くする

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食器や食品包装に使われるプラスチックに含まれるフタル酸エステルが、子供たちの血圧を高めている隠れた要因かもしれない、という米国ニューヨーク大学からの研究報告が、『小児科学雑誌』オンライン版に発表された。

1369717515 フタル酸エステルとは、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックの柔軟性を高めるために使われる可塑剤の一種である。ポリ塩化ビニルがきわめてありふれたプラスチックであるため、フタル酸エステルも身近に溢れているといってよい。

かつては無害と思われていたが、現在では、特におもちゃや食器から溶け出したものが乳幼児期に体内に入ることで、代謝やホルモン作用に深刻な影響を及ぼす可能性のあることが種々の研究から明らかになったため、欧米や日本ではフタル酸エステルを含むポリ塩化ビニルを、おもちゃや食器、食品包装に使うことは禁止されている。

今回、ニューヨーク大学のトラサンデ博士の研究グループは、このフタル酸エステルと小児高血圧症の関係に着目したという。「フタル酸エステルは心臓細胞の機能を阻害し、動脈への酸化的なストレスを高めて障害を与える可能性があります。けれども今まで、小児の心血管系に対するフタル酸エステルの影響を調べた研究はありませんでした」とトラサンデ博士は語っている。

高血圧とは、最高血圧が140 mmHg(ミリメートル水銀と読む。圧力の単位)以上または最低血圧が90 mmHg以上の状態をいう。通常、血圧は年齢と共に上昇して行くので、中年期以降にはかなり一般的になるが、近年20歳以下でも特に米国を中心に増加してきている。最近の米国民健康栄養調査によれば、中高校生の14%が高血圧か血圧高めの高血圧予備軍であるという結果が報告されている。これは小児肥満の増加が主な原因と考えられている。

「肥満の増加が小児の高血圧症増加の要因であるのは間違いないでしょう。でも今回の私たちの結果が示しているように、環境的な因子もそれなりに影響していると考えられます」とトラサンデ博士は語っている。「しかも、肥満は簡単には減らせませんが、フタル酸エステルは元々人工的な添加物に過ぎませんから、行政的な規制と個々人による食生活の見直しによって減らすことが可能なのです。」

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研究チームは、ワシントン大学とペンシルバニア州立大学と共同で、米国疾病管理センター(CDC)が定期的に実施している米国民健康栄養調査から、3千人近い子供の6年間にわたる調査データを解析した。フタル酸エステルの摂取量は、尿中に排泄された代謝産物を測定して推定した。

人種や社会経済状態、肥満度など血圧に関係する種々の因子の影響を取り除いて、フタル酸エステルが血圧に与える影響を解析した結果、平均して尿中のフタル酸エステルが3倍になるごとに、最高血圧が約1 mmHg上昇することが明らかになったという。

「たしかに、個々の子供にとっては、この程度の上昇はほとんど意味を持たないでしょう。けれども、国民のような大きな母集団のなかで統計的に見たときには、この変化は明白な小児高血圧の増加となって現れてくるのです」とトラサンデ博士は語っている。「私たちの結果は、政府の行政対応と子供たちの心臓や血管を守るための栄養教育の徹底を強く求めるものです。」

出典は『小児科学雑誌』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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